父らしく、
家族だけで静かに送りたい。
そう思って選んだ一日葬でした。
ところが、その日。
思いもよらない「最後のお客様」が式場を訪れました。
第4話 父が呼んでくれた、最後のお客様。
父の葬儀は、一日葬で行いました。
参列者は家族だけ。
母と私たち兄妹、そして孫たちを合わせても十人ほどです。
父はにぎやかなことが好きな人でした。
だから喪主のあいさつでは、私はこんな言葉を家族へ伝えました。
「今日は悲しい顔ばかりではなく、父の思い出をたくさん話しましょう。」
「父は、きっとその方が喜んでくれると思います。」
みんなが少し笑顔になりました。
祭壇の横には、父が愛用していた青い帽子を飾りました。
グラウンドゴルフの大会でもらった、大切な帽子です。
式が始まる少し前のことでした。
受付の方が私のところへ来て、
「ご親族の方でしょうか。」
と声を掛けてくださいました。
振り返ると、一人の年配の男性が立っていました。
私はお会いしたことのない方でした。
男性は少し申し訳なさそうに話し始めました。
「実は今日、この会場へ別の用事で来たんです。」
「入口でお名前を見て、もしかしたらと思って上がってきました。」
そして、祭壇の父の写真を見つめながら静かに言いました。
「やっぱり○○さんだったか……。」
その方は、父と長年グラウンドゴルフを楽しんできたご友人でした。
葬儀があることは、まったく知らなかったそうです。
偶然その日に、その場所へ来られたと聞き、私たちは驚きました。
男性は祭壇の横に飾られた青い帽子を見ながら微笑みました。
「この帽子、覚えていますよ。」
「町の大会で優勝した時にもらった帽子ですね。」
「その日は本当にうれしそうでした。」
私は初めて知りました。
父が、そんなに誇らしそうに帽子を大切にしていたことを。
さらに男性は笑いながら話してくださいました。
「○○さんはね、試合のあと、みんなを笑わせるのが上手だったんですよ。」
「いつも輪の中心にいる人でした。」
家族だけでは知らなかった父の姿が、そこにはありました。
母は涙をぬぐいながら笑っていました。
「そんな話、初めて聞きました。」
私も思わず笑ってしまいました。
父は最後に、自分では話せなくなっても、友人を通して私たちに思い出を届けてくれたような気がしました。
あの日、一日葬だったからこそ、家族みんなでゆっくり父の人生を振り返ることができました。
悲しいだけではない。
笑顔と感謝に包まれた、父らしい時間でした。
編集部より
家族葬や一日葬は、人数を限定する葬儀というイメージがあります。
しかし実際には、ご家族が故人との思い出をゆっくり語り合える時間でもあります。
故人の友人や知人から、家族も知らなかった思い出を聞けることも少なくありません。
そうした時間は、ご家族にとって何より大切な「最後の贈り物」になることがあります。
家族葬だからこそ大切にしたいこと
- 故人らしい思い出の品を飾る
- 思い出話ができる時間をつくる
- 悲しみだけでなく、笑顔で語り合う
- 故人と縁のあった方のお話にも耳を傾ける
- 家族らしいお見送りを大切にする
このお話で伝えたかったこと
私たちは父を見送るために集まりました。
でも、その時間は「別れ」のためだけではありませんでした。
父がどんな人生を歩み、どれだけ多くの人に愛されていたのか。
それを家族みんなで知る、大切な時間になったのです。
次回予告
葬儀が終わり、ほっとしたのも束の間。
位牌、仏壇、四十九日、相続…。
新たな不安が次々と出てきました。
そんな時、私たちが感じた「本当の安心」とは何だったのでしょうか。
あなたのご家族は、
大切な方の思い出を
知っていますか?
家族だから知っていることもあれば、友人だからこそ知っている一面もあります。
葬儀は、お別れの場であると同時に、その人が歩んできた人生を振り返り、思い出を分かち合う時間でもあります。


















































